沈黙は金、雄弁は銀
という慣用句・ことわざがある。意味はちょっと幅があるようだが、大体「何も語らないことが(雄弁よりも)大切な時がある」といった意味で使われる。前半だけで聞くことも多い気がする。
人と話すことが苦手な自分の座右の銘にして、言い訳にしようかとも思ったが、以前、この言葉が生まれたとき、金よりも銀のほうが価値が高かったので、もともとの意味は、「沈黙よりも雄弁のほうが大事である。」であった、という話を聞いたことを思い出した。もしこれが本当であるならば、自分の目論見とは正反対の結果になってしまうので、念のために少し詳しく調べてみることにした。
調べてみると、確かに沈黙より雄弁のほうが良い、と主張している人もいた。1。天然銀の存在量は天然金の存在量よりも少ないから価値が高かったらしい。具体的には、古代エジプトでは銀は金の2.5倍の価値があったようだ2。
このままでは、この慣用句は自分を守ってくれる盾になるどころか、自分に刃を向けてくることになってしまう。しかしまだあきらめるのは早い。この言葉が本当に金よりも銀のほうの価値が高かった時代に生まれたものなのか、そしてこの言葉を最初に発した主の意図はいかなるものだったのか、ということはまだ確認してないではないか。
最初にことわざについて調べているときに、この言葉は英語圏から流入した言葉であると書いてあったので、英語版(すなわち、“Speech is silver, silence is golden.” )の由来、および意味を調べてみることにした。3
英語版の意味は、Wikitionary4によると、
Not saying anything is often better than speaking too much or saying something inappropriate.
ということなので、とりあえず日本での一般的な意味と同じことになる。
それで語源のほうについては、類似するフレーズは古代エジプトでも見られるが5、英語ではThomas Carlyleが始めて使っており、沈黙が時には雄弁よりも好ましいという意味で使われていたそうだ。そして、この言葉はドイツ語を訳したもので、そこでも同じ意味で使われていたようだ678。これらの主張は大体共通していたので9、おそらく正しいのだと思う。
結論
ということで自分の中では、「沈黙は金雄弁は銀」という言葉の意味は、「沈黙が雄弁よりも好ましいときがある。」という結論に至った10。どこでも、時と場合による、といったことが含まれていたので、当初の目的は達成できなかったが、主張力のない人への攻撃でこの言葉を持ち出されたときに反撃する程度には役に立つと思う。
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/3548514.html (若干「主張力のない人」への攻撃的な姿勢がみられるが、) ↩︎
https://www.ielement.org/ag.html (中世ヨーロッパでも銀のほうが価値が高かったが、新大陸からの銀の流入により銀の価値が下がったらしい) ↩︎
この時点では、もしかしたら英語圏では使われない言葉となっているかもしれないという懸念もあった。 ↩︎
https://en.wiktionary.org/wiki/speech_is_silver,_silence_is_golden ↩︎
しかし、問題の古代エジプト語で書かれたフレーズ(あっても読めないが)、もしくは見つからなかった。 ↩︎
https://www.quora.com/What-is-the-origin-of-the-saying-silence-is-golden-speech-is-silver-and-what-does-it-mean ↩︎
https://www.phrases.org.uk/meanings/silence-is-golden.html ↩︎
互いに引用している可能性もあるかもしれないが ↩︎
今(執筆時点)思うと、なぜ最初の英語での使用例まで調べて、そこから先を調べようとしなかったのか疑問だ。しかし、これについて考えていたときは晩御飯を食べているときだったということを考えると、ここで思考をやめて次の作業に入った自分は正しかった。そして今もほかにやらなければならないので、ここから先を考えることは無いだろう。 ↩︎